米軍掃海艇駆逐艦エモンズ(USS EMMONS)
沖縄本島から古宇利大橋で繋がる古宇利島の沖、水深約40mに沖縄最大級の沈没船であるUSS EMMONS(米軍掃海艇駆逐艦エモンズ)が沈んでいる。全長106mの駆逐艦USSエモンズ。(駆逐艦:魚雷で敵艦を攻撃する速力の速い軍艦、USS:アメリカ海軍艦船 -United States Ship )船体はほぼ原形をとどめ、巨大な主砲、スクリュー、ソナー、機銃や兵士のヘルメットなども当時のままの姿で海底に横たわっている。
エモンズは第二次世界大戦末期の1945年4月6日、レーダーピケット任務に従事し、ロッドマン (USS Rodman, DMS-21) と共に航行中、大規模に展開された日本軍・神風特攻隊の攻撃に際して標的とされた。最初の1機がロッドマンを攻撃し、エモンズは損傷したロッドマンを護衛するため対空砲撃を行った。2隻の掃海艦は特攻機の攻撃に圧倒された。その多くは撃墜されたものの、エモンズは5機によってほぼ同時に攻撃を受けた。1機が三番砲塔の喫水線付近に突入し、弾薬庫に引火、大爆発を起こし、左舷船尾と戦闘情報センターが炎上した。乗組員は必死に格闘したが、エモンズは復元能力を失い、翌4月7日、敵の手に渡ることを避けるため、乗組員の救助後に米軍自らの手によってに沈められた。この戦闘でエモンズの乗組員60名が戦死し、77名が負傷した。
エモンズは第二次世界大戦の戦功で海軍殊勲部隊章に加えて4個の従軍星章を受章した。
2000年9月、沖縄古宇利島の北側の海底から時々浮いてくる油があることから、遊漁船の通報により第十一管区海上保安本部の調査により海底に沈んでいる軍艦が発見された。同年12月、地元のダイビングインストラクターの調査によりその軍艦がUSS Emmonsと判明した。
USSエモンズについては公式な発表はほとんどなく、ネット上では現在もさまざまな噂が流れてる。近年、「沖縄潜水科学技術研究所 No Limit」の近藤正義氏により、エモンズに突入したと思われる日本軍の特攻機の機種と部隊名が解明され、国内の新聞でも大きく取り上げられた。
水深が深いだけではなく潮の流れがとても速いため上級者のダイバーのみが潜ることができるダイビングスポット。又、魚雷(雷管・信管)、火薬、爆薬、砲弾など爆発物が数えきれないほど残るため、レックダイビングの知識とトレーニングも必須になる。
エモンズについて詳しくは、以下のリンクもぜひご覧下さい。
目次
エモンズ(USS EMMONS)徹底検証
情報提供:古川 正人氏、近藤正義氏、大沢あおい氏
参考資料:Wikipedia、朝日新聞
写真&動画撮影:空 良太郎
エモンズ (USS Emmons, DD-457/DMS-22)の概要
エモンズ (USS Emmons, DD-457/DMS-22) は、アメリカ海軍の駆逐艦。グリーブス級駆逐艦の1隻。艦名はジョージ・F・エモンズ海軍少将(1811年 – 1884年)に由来する。
正式名称 | USS Emmons, DD-457/DMS-22 |
位置 | 緯度:26度43分28.448秒 経度:128度01分46.524秒 |
起工 | 1940年11月14日 |
排水量 | 2,050トン |
全長 | 106.2 m |
全幅 | 11.0 m |
最大速 | 35ノット (65 km/h) |
乗員 | 208名(戦時276名) |
兵装 | 38口径5インチ砲4門 12.7mm機銃6基 21インチ魚雷発射管10門 20mm機銃6基 爆雷投射機6基 爆雷軌条2軌 |
USS EMMONS(エモンズ)船体図
エモンズ (USS EMMONS DD-457)の画像ファイルはこちら
グリーブス級駆逐艦は基本38口径5インチ単装両用砲を5門、ブローニングM2重機関銃を10挺、魚雷発射管2基(10門)が標準装備である。しかし使用用途や時期、作戦によって艤装の変更を行っている為、兵装や数が違う場合がある。(艦載兵装は艦首側から1番、2番と呼称する事とする)
エモンズは3番砲塔部に副砲2門及び探照灯が搭載されている。また副砲と探照灯の間にブローニングM2重機関銃を2挺装備されている事が確認できるが現在は台座のみが残っている。(付近には副砲の空薬莢や機関銃の弾丸などが落ちている為、弾頭が付いている物は爆発の危険がある。特に注意が必要である)
魚雷発射管及び煙突部のある装甲は剥がれ落ちているが、その付近の水底と船体の間に魚雷の様なものが挟まっている。沈没時に艤装が外れ、船体の下敷きになったと考えられるが長年の劣化により外れ、砂に埋まっている可能性もある。
前部の特攻機によって爆発した穴はCPO(上等兵曹)MESS ROOM(食堂)があった場所だと考えられる。そこから艦尾に向かってCRWS MESS ROOM(乗員食堂)及びSCUTTLE BUTT(船内水飲場)、CRWS MESS ROOMの順に部屋がある。食堂のさらに奥には調理場があることが画像上では確認できる。
食堂の上の部屋は上等兵曹の寝室があり、艦尾に向かってCPO WASHROOM(浴場)、その次は不確かだがSCPO(上級上等兵曹)の執務室が続いていると予想。後部の被弾箇所は甲板が剥がれており内部が露わになっている。部屋としては乗員の寝室があった場所だったと画像から予想できる。
主砲 口径12.7cm・5インチ砲塔(38口径5インチ砲)
副砲40mm連装機関砲
対空機銃単装20mm機関銃
魚雷・爆雷(対潜機雷)
エモンズの船尾の左舷側、架台に置かれている米海軍が使用した爆雷(対潜機雷)。頂上部分に爆発させるための深度調整信管・雷管が取り付けられている。火薬爆発の危険がある。写真の右下、全長2M程度を超える魚雷は船尾側に航走用のスクリューの取り付け後がある。 雷管・信管がそのまま取り付けられているので特に爆発の危険性が高い。ダイバーによる着底はもちろん、近づかない、触らないように注意が必要。 |
オロペサ型係維掃海具(O型)
旧大日本帝国陸軍の98式直協機
エモンズは、ロッドマン (USS Rodman, DMS-21) と共に航行中、大規模に展開されたの旧日本軍の特攻機の攻撃に際して標的とされた。最初の1機がロッドマンを攻撃し、エモンズは損傷したロッドマンを護衛するため対空砲撃を行った。2隻の掃海艦は特攻機の攻撃に圧倒された。その多くは撃墜されたものの、エモンズは旧日本軍の特攻機、5機によってほぼ同時に攻撃を受けた。1機が三番砲塔の喫水線付近に突入し、弾薬庫に引火、大爆発を起こし、左舷船尾と戦闘情報センターが炎上した。
現在、エモンズの船尾付近に旧日本軍の特攻機のエンジンが残っている。エンジン発動機は型式が日立のハ13甲型と考えられ、空冷単列星形9気筒、取り付けられているプロペラは2枚羽根式、エモンズ突入時には高速で回転していたため、両端が共に同じく内側に折れ曲がっているのが確認できる。この1945年の当時に現役で飛行していた大日本帝国軍用機は種類が少なく、たいていは3枚住友ハミルトンが取り付けられていた。旧日本軍の沖縄方面への出撃記録から1945年4月6日に陸軍新田原飛行場を出撃した特別攻撃隊の記録を確認できる。
1945年4月6日の出撃(菊水壱号作戦、陸軍特別攻撃隊)
陸軍特攻誠第36飛行隊:九八式直協(2枚羽根プロペラ)10機:新田原発:中尉 住田乾太郎指揮官
陸軍特攻誠第37飛行隊:九八式直協9機:新田原発:中尉 柏木誠一指揮官
陸軍特攻誠第38飛行隊:九八式直協7機:新田原発:少尉 喜浦義雄指揮官
陸軍特攻第22振武隊:一式戦2機(3枚羽根プロペラ):知覧発:少尉 西長武指揮官
陸軍特攻第44振武隊:一式戦4機:知覧発:少尉 小原幸雄指揮官
陸軍特攻第62振武隊:九九襲5機(3枚羽根プロペラ):万世発:少尉 富沢健児指揮官
陸軍特攻第73振武隊:九九襲12機:万世発:少尉 高田鉦三指揮官
陸軍特攻第一特別振武隊:四式戦8機(3~4枚羽根プロペラ):都城西発:少尉 林弘指揮官
上記の記録から駆逐艦エモンズの船尾付近に爆弾を抱えたまま特攻突入したのは98式複座直協機(空冷星形9気筒エンジン2枚羽根プロペラ)の36、37、38飛行隊の合計26機、搭乗員26名に絞られる。神風特攻隊=日本海軍ゼロ戦とイメージされるが、この特攻機は間違いなく日本陸軍の特攻機になる。アメリカ軍の駆逐艦には搭載されるはずがない、旧日本軍の航空機発動機とプロペラが発見できた事は歴史的にも物凄い事実だと思われる。
エモンズ(USS EMMONS)の動画
テクニカルダイビングチーム「No Limit」の調査
近藤正義氏(No Limit代表)により、エモンズに突入したと思われる日本軍の特攻機の機種と部隊名が解明され、国内の新聞でも大きく取り上げられた。近藤正義氏は北マリアナ諸島サイパン島で活動後、現在は沖縄に移住している。サイパン島でも沈没船の機種の解明をしている世界的なリブリーザーの第一人者。IART(国際リブリーザートレーナー協会)のJAPAN代表、IANTD(テクニカルダイビング協会)のアメリカ本部所属。
「眠る特攻機 水深45メートルに65年」 抜粋:朝日新聞
第二次世界大戦末期、沖縄近海で旧日本軍の特攻作戦により沈没した米海軍掃海艇エモンズの近くで見つかった飛行機の一部が、旧陸軍の特攻機である可能性が非常に高いことが分かった。
沖縄在住の「テクニカルダイビングチーム No Limit」のメンバーが調査し、中国北京の博物館に展示されている「九八式直接協同偵察機」の機体と比較した結果、①計器盤の形状と大きさ②固定脚の形状と大きさ③固定脚のカバーの形状④プロペラの枚数などが一致した。
エモンズは1945年4月6日、特攻機5機に突入され爆発炎上。今帰仁(なきじん)村の古宇利(こうり)島沖で米軍によって海底に沈められた。今回確認された九八式はエモンズと共に水深45メートルの海底に散らばっていた。同日の旧陸軍の特攻作戦「第一次航空総攻撃」では、新田原陸軍飛行場(宮崎県)から26機の九八式が出撃されたとされている。
エモンズ内部へのペネトレーション・未公開
エモンズ内部へのペネトレーションは非常に危険な行為です。ペネトレーションに関する相談や質問はお答えしません。写真撮影者の許可なくコピーや複製、商用利用することも固くお断りします。ご了承お願いします。
エモンズ(USS EMMONS)徹底検証のまとめ
エモンズのダイビングは上級者向けのポイントのため、リピーター様もしくは経験本数60本以上の方のみのご案内になります。
エモンズの沈没船は、これから長い年月をかけて原形が崩れ、朽ちていきます。第二次世界大戦の時代の沈没船を見ることができるのは、いまの時代に生きるダイバー達だけになります。ご希望の方は是非リクエストして下さい。リピーター様は経験本数が少なくてもスキルを確認できれば、早い段階でご案内しております。
エモンズのダイビングを楽しみたい方はエモンズダイビング 沖縄の沈没船・レックからお申込みください。